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肩の痛みを引き起こす病気には様々なものがありますが、こちらのページでは肩の痛みの特徴からその原因に迫っていく方法や治療法について解説いたします。

 

さらに関連する情報や詳しい情報をお知りになりたい方はこちらのホームページもご参照ください。

→肩とスポーツの整形外科専門医 歌島大輔オフィシャルサイト

肩は1つの関節ではない

さっそく肩の痛みの原因にせまる方法についてお話ししたいのですが、その前に最低限の「肩」に関する知識をおさらいしていきます。

それは、肩と言っても結構広範囲で、いろいろな部位を指す用語であるということです。

肩が痛いとおっしゃる患者さんも、痛いと手で押さえる場所は、

ここだったり、

 

 

ここだったり、

 

 

ここだったり、するわけです。

 

 

そこで大雑把に肩を4カ所に分けて考えてみてください。

肩甲上腕関節 -いわゆる肩関節-

まずはいわゆる肩関節です。厳密には肩甲上腕関節(けんこうじょうわんかんせつ)と言いますが、

肩甲骨と上腕骨(じょうわんこつ)で形成する関節です。

 

 

この肩甲上腕関節は人体のすべての関節の中で最も多方向に幅広く動きます。

このように肩甲骨は、受け皿のようなわずかに凹んだお皿状の形状(肩甲骨の関節窩:かんせつか)をしていて、上腕骨は球状(上腕骨頭:じょうわんこっとう)をしています。

この肩関節の中と外を隔てているものとして、大きく2つあります。

1つが関節包(かんせつほう)という薄めの膜(まく)であり、
もう一つが腱板(けんばん)という筋肉の先端のスジの合流部です。

この関節包と腱板が肩の痛みの大きなカギを握っています。

肩鎖関節 -肩甲骨と鎖骨の関節-

肩が痛いと言うときに、肩甲上腕関節の他に以外と見落としがちなのがこの肩鎖関節(けんさかんせつ)です。

肩鎖関節は肩甲骨の屋根に当たる部分である肩峰(けんぽう)と鎖骨の先端である鎖骨遠位端からなる関節です。

 

 

肩甲上腕関節が最も幅広く動く関節であるのに対して、肩鎖関節は動きは小さめです。ただ、肩が動くときに多くの人が考えている以上に肩甲骨自体が動いており、その支点の1つが肩鎖関節ですから、重要な関節であることには違いありません。

肩峰下滑液包(けんぽうかかつえきほう)

これは厳密には関節ではありませんが、肩甲骨の屋根にあたる肩峰の下には滑液包(かつえきほう)と呼ばれるスペースがあり、その下には腱板が走っています。

 

 

腱板損傷や腱板に負担がかかっているようなときは、この肩峰下滑液包の炎症が痛みの原因であることは少なくありません。肩の注射というと、まずこの部位に注射することが多いです。

肩甲骨と頚椎の間 -首と肩の間-

この部分、つまり首と肩の間はもちろん関節ではなく、筋肉が多くある場所です。頚椎から肩甲骨をつなぐ筋肉は、日々負担がかかりやすく、姿勢の変化にも影響を受けやすいので、筋肉が緊張して痛みの原因となりやすい部位です。要は「肩こり」ですね。

 

肩の痛みの部位でタイプ分けして原因に迫る

それでは、さっそく肩の痛みの原因に迫っていきます。まずは肩の痛みがどこに発生しているかでタイプ分けしてみます。これは患者さん自身がここが傷むと指でさせることもあれば、漠然とした痛みの中で圧痛(押して痛い)部位を探すこともあります。

肩関節周囲の痛み

そして、メインとなるのが肩関節の周囲の痛みです。厳密には肩甲上腕関節周囲の痛みですね。これは肩関節の中でも外でもあり、完全に区別することは難しいこともあります。肩峰下滑液包の痛みもこのカテゴリーに入ります。

ここの痛みの原因は多岐に渡りますが、関節の中と外を隔てる膜とスジである、関節包と腱板がやはりキーポイントになります。

関節包が炎症を起こして、分厚くなっていくのを四十肩五十肩凍結肩という病名がつきます。

 

 

腱板が炎症すれば腱板炎、腱板が損傷すれば腱板損傷、腱板断裂と呼ぶわけです。

さらに腱板に石灰・カルシウムが沈着すれば石灰性腱炎ということになります。

 

 

さらに、肩の前側の痛みの原因になりやすいのは上腕二頭筋長頭腱炎というものです。上腕二頭筋は力こぶの筋肉ですが、そのうち、長頭と呼ばれるスジが関節の中に入り込むようになっていて、そこでの炎症が起こりやすいと考えられています。

 

 

また、肩甲上腕関節は幅広く動く関節ゆえ、不安定になりやすいという弱点があります。そのため、脱臼と言えば、肩関節が圧倒的に多いわけです。
その肩関節脱臼が痛みの原因になることもあれば、脱臼まで至らなくても、不安定な状態で肩を使っているがための痛みというものもあります。

肩の少し上の痛み -肩鎖関節-

肩の少し上の痛みとは、すなわち肩鎖関節部の痛みを示しています。

肩鎖関節という部位を自分の身体で触れられるようになっていると、この痛みの部位が肩鎖関節か他の部位かということがわかります。
そのコツは鎖骨を真ん中から外側に向けて触っていくことです。鎖骨は弯曲しているので丁寧に触っていって、肩あたりにくると、人によっては少し出っ張っています。ここが肩鎖関節部です。

 

 

人によっては出っ張りがよくわからなくて、一番外の骨がない部分まで到達してしまった・・・という触れ方をする人もいます。そういった人はすでに肩鎖関節を越えて、肩峰の先端まで触れていることになりますので、その先端から指2本くらい内側に肩鎖関節があります。

 

この肩鎖関節部が痛い場合は当然、肩鎖関節に問題があることがほとんどですが、それは例えば、肩鎖関節に炎症が起こっている肩鎖関節炎、軟骨がすり減っている変形性肩鎖関節症、外傷性に脱臼してしまった肩鎖関節脱臼、鎖骨の先端が骨折してしまった鎖骨遠位端骨折などがあります。

 

この肩鎖関節の痛みは肩の水平内転と言って、腕を胸の前を通して逆側の肩の後を触れるような動きで痛みが出ることが多いです。水平内転では肩鎖関節の圧力が高まると考えています。

 

 

肩から首にかけての痛み

これは肩関節から離れて、肩から首にかけての痛みですね。
ここには頚椎という首の骨と肩甲骨を繋ぐ筋肉があり、一番大きな僧帽筋があり、さらに深いところの筋肉として肩甲挙筋、菱形筋などがあります。

 

 

この部位が痛いときには、やはり「肩こり」「寝違え」というようなものであることが多いですが、時に頚椎のヘルニアであったり、肩関節の問題の二次的な緊張状態を表していたりすることがありますので、注意は必要です。

肩の痛みの特徴でタイプ分けして原因に迫る

ここまでお読みいただいたとおり、肩の痛みの部位が絞られれば、原因もかなり絞られてきます。さらにはご年齢だったり、痛くなったきっかけ(誘因)だったり、というような特徴からさらに原因を絞り込むことができます。

ご年齢の変化

まずご年齢というのは大きなポイントです。どうしても身体というのは経年変化を起こしていきます。特に肩関節は進化の過程で二足歩行になり、肩関節は広い可動性が必要とされる状態となりました。

しかし、広い可動性を獲得する代わりに安定性が犠牲となり、その安定性をなんとか保とうとする組織に問題が起こりやすくなっていきます。それが前半でも解説した関節包であったり、腱板筋群(インナーマッスル)であったりするわけですね。

 

40–50歳代

まず肩関節の痛みで気になる年齢は40歳から50歳代です。それは四十肩、五十肩という病名からもわかります。

この年齢で肩が痛いということは、とりあえず四十肩・五十肩が圧倒的に多いというのは事実です。おそらく年齢的に少し肩関節の耐久性が落ちてきた中で、しかし、まだまだ肩はよく使う・・・そんなご年齢なんじゃないかと考えています。

もしくは、次の年代で頻度がどんどん上がってくる腱板損傷を防ぐためのサインなんじゃないかということも何となくですが考えたりもします。

 

60歳以上

四十肩・五十肩のご年齢を超えると、より肩の耐久性が落ちてきますので、頻度が上がってしまうのが腱板損傷です。

60歳以上の方で「五十肩だと思うんだけど・・・」ということで受診される患者さんも多いのですが、精密検査をしてみると腱板損傷だったというケースはとても多いです。

日々の蓄積負担(オーバーユース)

次に肩が痛くなった誘因、きっかけ、思い当たる節についてです。

実際、振り返ってみていただくと、日々、肩に負担がかかってたなぁと思うようなことがあったりします。

 

重労働

重いものを運ぶ、持ち上げるなどの作業が多いようなお仕事は肩を傷めやすいです。特に持ち上げて、上にものを乗せるとか置くという動作での肩への負担は相当大きいので、こういった作業が多い人は単なる四十肩・五十肩以上のことが起こっていることがあります。

それは腱板損傷もありえますし、肩鎖関節のトラブルも結構多いです。

 

オーバーヘッドスポーツ

オーバーヘッドスポーツとは野球の投球動作やバレーボールのスパイク、テニスのサーブなど頭上で腕を振るような動きをするスポーツのことをいいます。

 

 

言うまでもなく、この頭上で腕を振るという動作は肩に負担がかかります。特に野球の投手の肩の痛みは典型的で、野球肩投球障害肩というような名前が一般化するほどです。

この投球動作などの動きは肩関節においても非常に大きな幅広い動きを強いられませすので、腱板を傷めてしまったり、関節包の近くで関節唇という軟骨を傷めてしまうこと(SLAP損傷)があります。

 

激しいスポーツ・トレーニング

激しいスポーツ・・・例えば、コリジョンスポーツと呼ばれる衝突系のスポーツは肩も傷めやすいですが、主に外傷系の傷め方が多いです。

 

 

コリジョンスポーツの代表はアメリカンフットボールやラグビーなどですが、これらは転倒も多く、肩を直接強打することが頻繁にありますし、また腕を持っていかれてしまうこともあります。肩を直接強打しての損傷としては肩鎖関節脱臼鎖骨骨折、肩甲骨骨折など。腕を持っていかれてしまったときには肩関節脱臼が起こりやすいので注意が必要です。

また、肩に強い負荷がかかるウエイトトレーニング(例えば、ベンチプレスなど)によって筋肉を痛めてしまったり、肩鎖関節に炎症を引き起こすこともあります。

 

 

明かなきっかけあり -外傷・衝撃など-

転倒や肩を強打してしまうなどの外傷や強い衝撃が肩や腕に加わったり、急に無理な力が加わった瞬間に痛みが走るなど、明らかなきっかけがある場合は、やはり、なにかしら損傷があるケースが多いです。

 

転倒して手や肘をついてしまった

多いのは転倒したときに手や肘を地面についてしまって、肩が痛くなるというケースです。直接ついたのは手や肘だとしても、その力が肩に伝わって、肩が傷んでしまうということはよくあります。

腱板損傷だったり、上腕骨骨折を始めとした肩周囲の様々な骨折が起こりえます。

 

転倒などで肩を直接強打してしまった

転んで肩を直接地面や壁などに強打してしまうケースももちろん多いです。
この場合は肩を構成する骨の中で上腕骨よりも、より根本にある肩甲骨や鎖骨に骨折が起こったり肩鎖関節脱臼が起こったりということが起こりやすいです。

また、腱板損傷はこういったケースでも起こり得ます。

 

腕を後方(背中側)に持っていかれてしまった

腕を後方(背中側)に持っていかれてしまったというケース、もしくは、腕を背中側に思いっきり伸ばしたケースなどで起こるのが肩の前方脱臼です。

腕を後ろに持っていくと、反作用で腕の根本の肩の部分では上腕骨頭は前方にシフトするような力が加わります。この力が強ければ耐えきれずに脱臼してしまうことがあるんですね。

 

重いものを持ち上げた

重いものを持ち上げてから肩が痛い・・・というのも非常に多いケースです。

この場合は単に四十肩・五十肩だけの場合もありますし、この瞬間に腱板損傷を起こしてしまった・・・という場合もあります。腱板は明らかなきっかけもなく断裂していることもあるくらいですから、ちょっと重いものを持ち上げただけでも切れてしまうこともあります。

さすがにこれで骨折してしまうケースは多くはないです。

 

病院での肩の痛みの原因特定方法

ここまで、様々な肩の痛みの部位や特徴から考えられる原因を挙げていきました。あなたの肩の痛みと照らし合わせていただくと、何が怪しいか見えてこられたかもしれません。しかし、結局は自己診断で正確に診断することは難しいですし、我々、肩を専門とする整形外科医が丁寧に触れて、診察するだけでも正確な診断は難しいというのが現状です。そのため、様々な手をつくして原因に迫っていきます。

原因特定し、治療するためには肩を専門とする整形外科医にまずかかる

肩の痛みの原因特定(診断)と治療を最も得意とするのは当然、肩を専門とする整形外科医です。

ここまで解説したような肩の痛みの中でも、単に「肩こり」やその延長線上の症状のみの場合はお近くの整形外科クリニックにおいて電気治療や牽引などの物理療法や投薬を受けていただくのがオススメですが、

肩関節の痛みや肩鎖関節の痛みの場合は肩を専門とする医師の診察を受けていただくのがオススメです。

 

その判別ポイントは肩を動かして痛いか?肩を動かせるか?ということです。

 

肩こりやその延長線上の症状のみの場合は首を動かすと痛いかもしれませんが、肩は痛みなく大きく動かせることが多いですので、その場合は無理に肩専門の整形外科医の診察を受ける必要はないかもしれません。

痛みの性状を診察・テストで調べていきます

それでは実際の診察の流れや意味をご説明いたします。

まず最初は痛みの特徴や患者さん自身の背景を伺っていきます。これを問診と言いますが、その後、肩に触れたり、動かしたりして痛みの特徴、部位をより正確に把握していきます。

具体的には圧痛点という押して痛い部位を探したり、肩の可動域(動かせる範囲)を測定したりします。

 

 

さらには疼痛誘発テストと言って、どのような動き、どのような負荷で痛みが出るかをテストしていきます。

レントゲン、MRI、エコー、CTなどの画像検査で詳しく診ていきます

さらにレントゲンで骨の変化や関節の変形の有無などをチェックします。例えば、大きな腱板損傷があれば肩峰の下のスペースは狭くなりますし、ときに肩峰の骨棘という骨の出っ張りが出てきます。

 

また変形性関節症、いわゆる軟骨がすり減った状態ですが、これはレントゲンで一発でわかります。肩鎖関節脱臼や肩関節脱臼、骨折なども当然、レントゲンでまず検出すべきものですね。

 

 

さらにレントゲンの状態を立体的に詳しく見ようと思うとCT検査を行います。CT検査は身体を輪切りにした像ができあがりますが、最近はそれを再構成して立体的な画像が作成できます。

 

 

腱板や関節包、関節唇など肩関節の痛みの原因になりやすい部分の多くはMRIが最もよく検出できます。そのため、肩の診察ではMRIでのチェックがオススメです。MRIは緊急時を除くと基本的には予約検査なのでご注意ください。

 

 

エコーもそれに準じた画像が得られ、また、動かしながらみることができるので、私も時々使用しております。

これらの画像検査で得られた異常所見と実際の診察、テストの結果を照らし合わせると多くの場合は肩の痛みの原因がかなり絞れます。

時には注射・リハビリなどを行って治療しながら原因を特定していきます

しかし、まだ特定できず、確定診断に至らない・・・ということもあります。

そういったときには絞ったターゲットとなる原因を改善するような治療を試みることで、効果があるかないかで原因特定を進めます。これは診断的治療と言います。

特に診断的治療に有用なのが注射です。注射はピンポイントに薬剤を投与できるので、どこが炎症を起こして、痛みの原因となっているかを特定するのにも、そして、治療としても効果が高いと感じています。

 

 

肩の痛みの原因別治療法

肩の痛みの原因への迫り方をここまでで解説いたしました。
原因がある程度特定できたという段階では、いよいよどう治療していくか?ということが気になりますね。

四十肩・五十肩・凍結肩

まずは最も多いであろう四十肩・五十肩です。

四十肩・五十肩は肩関節周囲炎・凍結肩・癒着性関節包炎など様々な名前があって、どれも正解ですが、どれも不正確というような印象の名前です。

 

様々な原因で肩の周囲に炎症が起こり(肩関節周囲炎)、その防御反応として炎症が広がったり、関節包が分厚くなったり、癒着するなど(癒着性関節包炎)して、最終的には凍ったように肩が上がらない、回らないという状態に至る(凍結肩)のが典型的な流れです。

 

そこでシンプルな考え方として、

  • 炎症が強い時期は無理に動かさず炎症を抑える治療を中心に
  • 拘縮(カタい状態)が強い時期はリハビリや手術(受動術)などを中心に

 

という治療を行います。

炎症を抑える治療というのは消炎鎮痛剤の内服や湿布などの外用剤であったり、また、炎症を強く抑えるステロイド剤やヒアルロン酸を注射する方法が一般的です。

 

 

リハビリテーションは肩の可動域訓練と言って、動かせる範囲を少しずつでも広げていくことを行います。癒着してカタくなった関節包を徐々に徐々にほぐしていくようなイメージです。

 

 

しかし、そのリハビリではなかなか太刀打ちできない拘縮(3−5ヶ月で改善しない)に対しては関節鏡という内視鏡を使って分厚く癒着した関節包を中から切開して、一気に可動域を改善させる関節鏡下関節受動術(肩)を行うことがあります。これは全身麻酔で4日から2週間くらいの入院が必要ですが、効果が高い方法です。

 

 

上腕二頭筋長頭腱炎

上腕二頭筋(じょうわんにとうきん)というのは力こぶの筋肉ですが、そのうち「長頭(ちょうとう)」というスジは肩の関節の中に入っています。

この上腕二頭筋長頭腱は肩の動きの中で徐々に擦れて炎症を起こし、傷んできてしまうことがあります。最終的には切れてしまうこともありますが、切れてしまうと痛みが引くという現象も少なくありません。

 

 

実際、しつこい上腕二頭筋長頭腱炎の治療として上腕二頭筋長頭腱を根本で切離(切り離す)してしまう治療があり、長頭腱の痛みに対しては効果が高い治療法です。

ただ、いきなり手術で切るというよりは、長頭腱に注射をしたり、内服、外用剤を処方したりと、まず炎症を抑える方法を試すのが一般的です。

腱板損傷(腱板断裂)

腱板損傷(腱板断裂)は肩の大切なインナーマッスルの腱が切れてしまうという重大な状態ですが、多くの人が思っている以上に頻度が高い病態です。
そして、腱板損傷の多くは自然治癒よりも徐々に重症化していく傾向があるので手術を行うことも多くなっています。

 

 

 

詳しくはこちらの記事を御覧ください。
腱板損傷(腱板断裂)のリハビリから手術まで

石灰性腱炎

石灰性腱炎、もしくは石灰沈着性腱板炎という名前の病態があります。
これは腱、特に肩の腱板にカルシウムの結晶(石灰)が付着してしまい、それに対する異物反応の炎症や、石灰がこすれること(インピンジメントと言います)による炎症によって痛みが生じます。

 

 

特に異物反応の炎症は激しく、夜間の救急外来をびっくりして受診されるくらいの激痛になることも少なくありません。

この石灰の多くはレントゲンで指摘でき、その石灰による周囲の炎症が痛みの原因とすれば、まずはその周囲にステロイドの注射をすることが一番効果があります。ここでうまくピンポイントに注射できれば、痛みは速やかに改善します。

しかし、石灰が残ってしまうと、物理的に石灰があり、肩を動かすたびにカタい石灰が他の部位とこすれて(インピンジメント)、炎症を繰り返すということもあります。
その場合には当院では関節鏡手術で石灰を削り出す手術を行っています。

肩の脱臼・不安定症

肩の脱臼や脱臼までいかなくても不安定性による痛みが出ることがあります。

肩の脱臼は繰り返してしまう、癖になってしまうことが多いので、脱臼を繰り返す場合は再脱臼を防ぐための手術を関節鏡手術として行うことが多いです。

 

また、不安定性による痛みの場合はまずインナーマッスルのトレーニングなど安定化させるリハビリをした上で、それでも症状が残ってしまう場合は、安定化させる手術を行います。

脱臼グセを治すのも不安定性を安定化させるのも、基本は関節唇(かんせつしん)という軟骨を縫い付ける手術(関節鏡下関節唇形成術、バンカート手術)を行います。

 

 

肩鎖関節炎・肩鎖関節脱臼

肩鎖関節の問題は肩鎖関節に炎症が起こってしまう肩鎖関節炎、肩鎖関節の軟骨がすり減ってしまう変形性肩鎖関節症、肩鎖関節部分の外傷である肩鎖関節脱臼鎖骨遠位端骨折などがあります。

 

まず肩鎖関節炎や変形性肩鎖関節症の場合は肩鎖関節の炎症を抑えることをまず試みます。内服や外用剤の処方もそうですが、肩鎖関節にステロイド薬を注射する治療が効果的であることが多いです。

 

これらの炎症を抑える治療をしても、結局痛みが残る、繰り返すという場合によく行うのが鎖骨遠位端切除(さこつえんいたんせつじょ)という手術です。これは鎖骨の先端を軟骨ごと切除してしまう(1cm前後)方法です。これを関節鏡を使って行います。関節が炎症の原因なら、その関節を取ってしまえばいい・・・というと乱暴に聞こえますが、肩鎖関節は体重を支える関節でもなければ、複雑な形をした軟骨が向かい合った複雑な動きをする関節でもないので、この治療が有効になります。

 

 

外傷である肩鎖関節脱臼や鎖骨遠位端骨折というものに対しても手術が必要な中等症や重症なものに対して関節鏡を使った手術を行っています。

 

 

 

肩こり・頸肩腕症候群

肩こりは首から肩にかけて、もしくは首から背中にかけての痛みとして自覚することが多く、肩関節を動かしてもそんなに痛くないが、首を動かすと痛いとか、動かしては痛くないけど、ずーんと重くて、マッサージが特に気持ちよいというのが典型的な症状です。これまで解説してきた肩関節の痛みの原因とは性質が違うかと思います。

 

この肩こりは、要は首から肩、背中周りの筋肉の緊張状態が引き起こしていると考えられていて、この緊張は伝搬していくので頭痛を引き起こしたり、腕や手の痛みにまで拡がったり(頸肩腕症候群)します。

 

この治療は緊張を緩めていくことが中心なので、クリニックでの筋弛緩薬の処方や物理療法(電気治療、牽引療法、マッサージなど)が中心となります。

 

どうしてもしつこい症状や腕のしびれなどがある場合は頚椎のヘルニアなど神経障害が隠れていることもあるのでMRIで精密検査することもあります。

 

ストレッチが効果的な肩の痛みは?

肩の痛みに対してどのようなストレッチをしたらいいですか?というご質問をいただくことがあります。

まず原因毎に必要なストレッチが違うこともありますが、そもそもストレッチ自体が有効かどうかということも考える必要があります。

 

例えば、肩の腱板断裂に対してストレッチをすることで腱板断裂部の修復が促進されるかと言えば、当然、そんなことはないわけですね。そういう意味では腱板断裂にストレッチは効果的ではないということが言えるかもしれません。

 

しかし、肩甲骨が十分に動かないために腱板断裂の症状が強く出たり、術後のリハビリが遅れたりということもあるので、肩甲骨周囲の筋肉を大きく動かすようなストレッチは効果的です。

 

この肩甲骨のストレッチは基本のストレッチとして多くのケースで有効です。

 

また、肩こり、頸肩腕症候群に対して首周り、背中周り、肩甲骨周りの筋肉をリラックスしながら伸ばしてあげるようなストレッチは有効です。ここで注意は張っている筋肉を無理矢理伸ばそうと、力ずくで伸ばそうとしないことです。気持ちいい程度に伸ばすことでリラックスが維持できて、筋肉の緊張が改善していくことを狙います。

 

四十肩・五十肩は炎症が強い時期は肩甲骨周囲筋のストレッチのみにしておくべきです。そうでないと、痛みが増して炎症が長引いてしまうだけです。ただ、炎症が落ち着いてきたら肩関節のストレッチをしっかりやってカタくならないようにするは効果的です。

 

まとめ

このページでは肩の痛みの原因にはどんなものがあり、その原因はどのように特定していくのか、どのように治療していくのかということを解説いたしました。

 

一口に四十肩、腱板損傷などと言っても、1人1人状態が違いますので、本当に原因がそれでいいのか、治療法はどれを選択すべきなのか?ということも1人1人変わってきます。

 

そのため、実際にお話を伺い、診察をし、検査をし、治療をしていく中でベストを探っていくことが必要です。もしお困りの場合はお時間を作って受診いただければと思います。

参考ホームページ

→肩とスポーツの整形外科専門医 歌島大輔オフィシャルサイト

→電子書籍:肩の正解を導き出す「SHOULDER RULE」

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